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神戸家庭裁判所尼崎支部 昭和57年(少)11277号 決定 1982年9月03日

少年 T・GことR・G(昭四〇・五・二六生)

主文

少年を神戸保護観察所の保護観察に付する。

本件につき証人三名に支給した旅費及び日当のうち金一万円を少年の扶養義務者T・KことR・Kから徴収する。

理由

(非行事実)

少年は、兵庫県尼崎市○○付近にい集する暴走族グループの一員であるところ、昭和五七年四月四日午前四時三〇分頃、尼崎市○○町×丁目××番××号先の路上にグループの仲間九名と集合し、同所で右一〇名の者が隊列を組んで大阪市梅田方面へツーリングし、途中信号無視などの暴走行為をすることを共謀したうえ、自動二輪車五台に分乗(それぞれ運転又は後部席に同乗。少年はその一台を運転)し隊列を組んで出発したが、暴走途上の同日午前五時一五分頃、大阪市北区○○×丁目×番先の信号機により交通整理の行なわれている交差点に差しかかつた際、対面する信号機は赤色を表示しているのに、これを無視し、先頭車に順次続きながら五台がほぼ一列縦隊となつて同交差点内に進入し、マフラーの轟音を響かせながら南から東へと右折進行したため、折柄左方道路より青信号に従つて西から東へ向けて直進してきたA(四〇歳)運転の営業用普通乗用自動車に対し、危険を感じさせて同交差点内に急停止をさせその進路を妨害し、もつて共同して、著しく他人に迷惑を及ぼす行為をしたものである。

(適用法令)

道路交通法六八条、一一八条一項三号の二

(処遇の理由)

少年は、短気で抑制力に欠け、付和雷同的即行的に行動しやすく、情緒も不安定な面がある。その生活態度は、中学校二年時から乱れ、不良友達との交遊、深夜徘徊、遅刻、怠学、喫煙、シンナー遊び、服装違反、無免許運転、校内暴力等の問題行動が目立ち、高校一年中退後も家業の手伝いに真剣に取り組む姿勢がなく、より強い刺激を求めて、暴走族の暴走行為にも参加するようになり、本件非行へと発展したものである。少年は、本件以外にも、これまで占有離脱物横領、凶器準備集合、暴行、現住建造物等放火未遂、暴力行為等処罰に関する法律違反保護事件として、何回か当庁に係属するなど、非行についての内省や罪障感は乏しいものであつた。家庭も、幼少期における少年と父との間の情緒的交流は希薄であり、両親から基本的躾がなされなかつたなど適切な監護状態にあつたとはいえない。

少年の本件非行の態様並びに性格、行状、環境等に鑑み、少年の健全な育成を期するためには、相当期間少年を保護観察(交通一般)に付することが必要であると認める。

(費用徴収の理由)

少年及び附添人は、少年らの運転する五台の車が交差点内に進入し、右折進行した行為は、A運転の車に何ら衝突の危険を及ぼしたものではなく、本件送致事件は道路交通法六八条の共同危険行為には該当しな

いと争い、証人五名の証拠調を申請した。当裁判所は、うち証人B、同C、同Dの三名を採用し、証人尋問を行なつたが、その証言の内容は、送致事実と同一性を有する上記非行事実の存在をより一層確信させただけに終わつた。

少年は、現在父の営む金属くず商の手伝いをする身であり、父には経済力があること、少年の上記性格の形成や行状並びに非行は、保護者である実父母に適切な監護の態度が欠けていたことにも起因するところ大であることを考慮すると、本件で、証人三名に支給した旅費及び日当のうち金一万円を少年の扶養義務者である実父T・KことR・Kに負担させるのが相当である。

よつて、少年法二四条一項一号、少年審判規則三七条一項、少年法三一条一項を適用して、主文のとおり決定する。

昭和五七年九月三日

(裁判官 森田富人)

本書は謄本である

即日同庁裁判所書記官中畠寛之<印>

本件主文第二項の費用徴収裁判の執行を命ずる。

昭和五七年九月二九日

神戸家庭裁判所尼崎支部

裁判官 森田富人<印>

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